ベトナム新時代の幕開け —— ロンタイン国際空港の開港とインフラ自立の実像

ベトナム新時代の幕開け —
ロンタイン国際空港の開港とインフラ自立の実像
ホーチミン市を取り巻く航空インフラが歴史的な転換点を迎えようとしています。これまで南部ベトナムの航空需要を一手に担ってきたタンソンニャット国際空港に加え、ドンナイ省ロンタイン地区で建設が進んでいたロンタイン国際空港(Long Thanh International Airport)が、2025年末から2026年にかけて段階的に開港する運びとなりました。
ロンタイン空港とは何か
ロンタイン国際空港は、ホーチミン市中心部から東へ約40kmの場所に位置する国家戦略プロジェクトです。全体計画は4期に分かれ、最終的には年間1億人以上の旅客と5百万トンの貨物を処理可能な東南アジア屈指のハブ空港として設計されています。
第1期(Phase 1)概要
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着工: 2021年1月
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滑走路1本、旅客ターミナル1棟(ICAO 4F基準)
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年間処理能力:25 百万人の旅客、1.2 百万トンの貨物
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商業運用開始:2026年前半(6月頃予定)
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第1段階としての技術試験飛行は2025年12月19日に実施済み(官民航空機によるテスト飛行含む)
この空港が機能すれば、国際線の主要ハブ機能をロンタインへ移行し、タンソンニャットは国内線中心の運用になる可能性が出ています。
ベトナムのインフラ建設の変化
ここ10年余り、ベトナムのインフラ建設を振り返ると興味深い変遷があります。
これまでのベトナムのインフラ依存と遅延
日本や他国からのODA(政府開発援助)は、タンソンニャット空港の整備やホーチミン・メトロなど多くのプロジェクトで不可欠でした。一例として、ホーチミン・メトロは計画よりおよそ10年遅れて開業しており、外部パートナーへの依存の実態が浮き彫りになっています。
近年の自立傾向
一方でロンタイン空港に代表されるように、国家が主体となって巨大インフラを推進する動きが加速しています。政府主導による建設管理、資金調達、作業監督体制が組織的に機能しつつあり、計画に対して概ね予定通りの進捗が見られるのは注目すべき点です。
ただし、課題が完全に解消されたわけではありません。例えばホーチミン市内とロンタイン空港を結ぶ道路・鉄道インフラは整備が追いついていない区間も多いのが現実です。都市高速道路や接続路線の完成でアクセス時間は短縮されつつありますが、本格的な鉄道アクセス(高速鉄道等)は今後の投資課題として残っています。
発展の兆候と制度整備の前提
ロンタイン空港の進捗は、単なる巨大プロジェクトの成功例ではありません。経済規模の拡大とともに、
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法制度の整備(税制・インフラ法制)
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汚職対策の強化
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国内企業・技術者の力によるプロジェクト遂行
といった構造的な変化が進んでいることの象徴でもあります。これらがしっかりと軌道に乗れば、ベトナムはインフラ輸入国から自前で世界水準のインフラ開発を進める国への飛躍が可能です。
結論:ベトナムの「次の飛躍」
ロンタイン空港はまだ第一歩に過ぎません。サービスレベル、周辺アクセス、関連産業の育成など、改善すべき点は多い。しかし、計画通りにここまで進めてきた強靭さと、制度面の整備努力は否定できない現実です。
これこそが、ベトナムが「インフラ後進国からインフラ自立国」へと進化する証左かもしれません。そして、ここから生まれる航空・物流・観光のダイナミズムは、国内のみならず東南アジア全体の競争環境にもインパクトを与え続けるでしょう。


