ベトナムの保険市場と営業課題


ベトナムの保険市場と営業面の課題

―「必要なのに、なぜ広がらないのか」を現場から見る

ベトナムの保険市場は、数字だけを見ると「これから伸びる市場」に見えます。

人口は1億人規模、経済成長率も高く、中間層も確実に増えている。

社会保障が十分とは言えない国であれば、本来、保険の需要は高まるはずです。

それにもかかわらず、ベトナムの保険加入率は依然として低水準にとどまっています。

生命保険を含む保険全体の浸透率(保険料収入/GDP)は、ASEAN諸国の中でも低く、

人口ベースの生命保険加入率も おおよそ1割前後 にとどまっています。

では、なぜ「必要なはずの保険」が、実際には広がらないのでしょうか。

 


NKCとベトナム保険の関わり方

NKCは、ベトナムで保険代理店のライセンスを保有し、国内最大手の Bao Viet Insurance の正規代理店でもあります。

ただし、正直に言えば、保険料は比較的安く、代理店手数料も高いとは言えません。

 

そのためNKCでは、保険を「収益の柱」にするのではなく、営業スタッフの研修・育成案件として取り組みつつ、副業レベルにとどめるという現実的なスタンスを取っています。

この判断は、ベトナムの保険市場を表面的ではなく、構造的に見た結果でもあります。

 


潜在需要はある。それでも保険は選ばれない

多くの人は、「保険が伸びない=貧しいから」と考えがちです。

しかし、実際はもっと複雑です。

 

富裕層にとって、保険は必需品ではない

 

ベトナムの富裕層は、不動産、事業収益、現金・外貨など、十分な自己資本を持っています。

彼らにとって保険は、「なければ困るもの」ではなく、

自分で管理できるリスクを、あえて外注する必要はない金融商品という位置づけです。

 

さらに、

・約款の複雑さ

・支払い時の不透明感

・長期拘束への抵抗感

こうした要素が重なり、「それなら自分で管理した方が早い」という判断に落ち着くケースが少なくありません。

 

結果として、富裕層=保険加入率が高い とはならない。

これはベトナム特有というより、新興国に共通する傾向です。

 


中間層にとって、保険は「正しいが後回し」

一方で、最も注目すべきは中間層です。

中間層は確実に増えていますし、本来であれば、保険ニーズが最も高い層でもあります。

しかし現実はこうです。

家賃、教育費、生活費、移動コスト、親族への仕送り。

これらの支出が先に決まり、保険は「必要なのは分かっているが、今は払えない」存在になります。

 

重要なのは、これは保険への無理解や拒否ではありません。

将来よりも「今月の支払い」の方がリアルで、キャッシュフローの制約の中で、合理的に優先順位を下げているだけです。

つまり中間層にとって保険は、間違っていないが、どうしても後回しになる商品なのです。

 


営業の問題は「努力不足」ではない

ここで、営業の話になります。

ベトナムの保険営業がうまくいかない理由は、営業担当者の努力不足ではありません。

問題は、営業の設計そのものです。

 

多くの現場では、

商品説明 → 保険料提示 → 契約

という短絡的な流れになっています。

 

しかし、保険は本来、人生設計・リスク設計・キャッシュフロー設計と一体で語られるべき商品です。

そこが省略されたままでは、顧客は「なんとなく不安だけど、今はいいや」で終わってしまう。

 

さらに、短期の契約数だけを追うKPI設計が、フォロー不足・信頼不足を生み、結果として「保険はよく分からないもの」という印象を強化しています。

 


なぜNKCは保険を“研修案件”にしているのか

こうした市場構造と営業現実を踏まえると、NKCが保険を主力事業にしていない理由は明確です。

 

保険は、

・売り切り型の商品ではない

・短期利益を出しにくい

・営業品質が成果に直結する

非常に「営業の基礎力」が問われる分野です。

 

だからこそNKCでは、

保険を 営業研修・プロセス設計・顧客理解力を鍛える教材として位置づけています。

 

この分野で通用する営業ができれば、他のB2B・B2C商材でも通用する。

そういう意味で、保険は「最も正直な営業教材」でもあります。

 


結論:保険が伸びないのは、誰も間違っていないから

ベトナムの保険市場を一言でまとめるなら、こうです。

  • 富裕層は、保険がなくても困らない

  • 中間層は、保険より先に払うものが多すぎる

つまり、誰も間違った判断をしていない結果、保険が選ばれていない

 

この現実を無視して、

「もっと売ろう」「もっと契約を取ろう」としても、

市場は動きません。

 

必要なのは、商品を売る営業ではなく、将来を一緒に整理する営業

NKCが保険を冷静に扱い、研修と実務の場として活用しているのは、この市場構造を理解したうえでの、極めて現実的な判断です。