ベトナム人は自由な働き方を好む

ベトナム人は自由な働き方を好む
― 営業現場から見える価値観の変化と、検証型営業が成立する条件
近年のベトナムでは、働き方に対する価値観が明確に変化しています。
象徴的なのが、大学を卒業した優秀な若者であっても、特定の企業に就職せず、Grab などの配車サービスのドライバーとして働く人が増えていることです。
日本の感覚では「なぜ安定した会社に入らないのか」と思われがちですが、ベトナムではこれは合理的な選択です。
なぜ「会社員」より「自由」を選ぶのか
Grabなどのプラットフォーム型の仕事には、次の特徴があります。
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働きたい時だけアプリを開けば仕事ができる
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出勤義務がない
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上司や組織に管理されない
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ノルマや評価面談がない
一部には会社契約のドライバーもいますが、多くは個人事業的な働き方です。
つまりベトナムでは今、
「誰かに管理される安定」より、「自分でコントロールできる自由」
が選ばれています。
これは怠慢ではありません。
将来が不確実な社会において、リスクを分散する極めて現実的な判断です。
営業職が敬遠される理由
――給料が高くても選ばれない仕事
この価値観は、営業の現場にもはっきり表れています。
ベトナムでも営業部に所属し、正社員として働く人はいます。
しかし全体として、営業職の人気は高くありません。
理由は明確です。
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KPI
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数字ノルマ
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日常的な進捗管理
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上司からの詰め
これらが「自由を奪うもの」と認識されているからです。
給料が多少高くても、
精神的に縛られる仕事は選ばれにくい
これが今のベトナムの現実です。
フリーランス営業が成立する業界と、その限界
一方で、保険・不動産・投資関連では、正社員ではなくフリーランサーとして活動する営業が多く存在します。
これらに共通するのは、
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一発当たれば大きい
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営業が得意な人が力技で契約を取る
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短期成果が明確
という営業モデルです。
ただし、このやり方には副作用があります。
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十分な説明をせず契約が進む
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契約後にトラブルが発生する
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長期的な信頼関係が築かれにくい
売りやすく、利益が出やすい商材であれば成立しますが、
日本企業が扱うような
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理解に時間がかかる商材
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中長期での導入が前提の商材
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品質・安全性・継続性を重視する商材
とは、相性が良いとは言えません。
ベトナムで「ソリューション営業」が難しい本当の理由
日本企業が得意とする、
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課題整理
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仮説構築
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小さな検証
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改善の積み重ね
こうした検証型・ソリューション営業を実行できる人材は、ベトナムでは多くありません。
理由は単純です。
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時間がかかる
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すぐに成果が出ない
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自由裁量が制限される
この営業プロセス自体が、
「自由な働き方を好む価値観」と真逆だからです。
検証型営業を成立させるには「モチベーション設計」が不可欠
ここで重要なのが、検証型営業は、仕組みだけでは回らないという点です。
地道で丁寧な営業は、
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放っておけば必ずモチベーションが下がる
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「なぜやるのか」が見えないと続かない
という特性があります。
日本的な
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我慢
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忍耐
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将来のため
といった精神論は、ベトナムではほぼ機能しません。
NKCが重視しているのは「管理」ではなく「納得」
NKCは、営業スタッフを日本式に管理しようとはしていません。
重視しているのは、常に次の点を明確にすることです。
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なぜこの検証を行うのか
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今日の活動は何につながるのか
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売れなかった場合、何が成果として残るのか
ベトナム人スタッフは、意味を理解すれば、自主的に動きます。
逆に、意味が見えない仕事は、どれだけ条件が良くても続きません。
NKCが実際に行っているモチベーション維持の工夫
NKCでは、検証型営業を成立させるために、以下を意識的に行っています。
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売上以外の評価軸を明確にする
ヒアリング数、仮説の精度、改善提案の質を成果として扱う
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「売れなかった」を失敗にしない
売れない理由が言語化できれば、それ自体を検証成果とする
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日本企業の考え方を現地スタッフと共有する
なぜ慎重なのか、なぜ価格より品質なのかを理解させる
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役割分担を前提にする
全員にクロージングを求めず、検証・情報収集に強い人材を活かす
これは、自由を尊重しながら、仕事として成立させるための現実的な設計です。
NKCが「売上至上主義」を取らない理由
短期的に売上を作るだけなら、もっと楽なやり方はあります。
しかしNKCは、
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日本企業が参入判断を誤らないこと
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無駄な投資を減らすこと
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撤退すべき時に撤退できること
を最優先しています。
そのため、売上よりも「判断材料を揃えること」を成果と定義しています。
まとめ
――ベトナム営業は「人を動かす設計」が9割
ベトナムで営業がうまくいかない原因は、市場でも商品でもありません。
多くの場合、
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人の価値観を理解せず
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日本式の管理を持ち込み
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モチベーション低下を放置する
ここで失敗しています。
検証型営業は、放置して回る仕組みではない。
だからNKCは、
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現場に入り
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人を見て
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モチベーションが落ちる前に手を打つ
その地味で継続的な努力を続けています。
派手さはありません。
しかし、日本企業がベトナム市場で致命的な判断ミスをしないためには、
これが最も現実的で、再現性のある方法だと考えています。


