ベトナムの若者の間で人気がある「屋台ラーメン」

ベトナムの若者の間で人気がある「屋台ラーメン」
ベトナムでは以前から和食の人気は根強い。
韓国料理と比べると話題性ではやや劣るものの、ホーチミン市 やハノイのショッピングモールを歩けば、日本食レストランの存在感は確実に増している。
ただし、これまでの「和食」は――
正直に言えば、高級路線が中心だった。
寿司、割烹、鉄板焼き。客層は富裕層や外国人。
“日常で食べる日本食”ではなかった。
変化の象徴が「屋台ラーメン」
ここ数年で、明らかに潮目が変わった。
若者向けの日本食、しかもベトナム人経営の店が増えている。
その代表例が、夜だけ現れるラーメン屋台だ。
昼間は何もないビル前の空き地。
夜になると、屋台を引き出し、日本語の書かれた提灯を吊るす。
メインストリート沿いに、即席の“日本っぽい空間”が立ち上がる。
客層の大半は20代。
価格帯は 70,000〜100,000VND(約400〜600円)。
ベトナムの若者にとって、無理のないレンジだ。
ラーメンだけじゃない。寿司も屋台で売れる
興味深いのは、メニュー構成だ。
ラーメン専門かと思いきや、うどん、寿司なども普通に並ぶ。
日本人から見るとツッコミどころは多い。
味については、私も長くベトナムにいるので感覚が少しずれているかもしれないが、そこそこ「美味しい!」と感じる。
当然、普通の日本人が食べたら感想は違うかもしれない。
それでも、店は賑わっている。
彼らが買っているのは「味」ではない
理由はシンプルだ。
彼らは日本食そのものを求めているわけではない。
求めているのは――
子どもの頃から親しんできた、日本のアニメの世界観。
・日本語の文字
・赤い提灯
・夜の屋台
・ラーメンをすするという行為
これらがセットになって、「日本っぽい体験」になる。
味覚の相性だけで言えば、
日本食がベトナム人全員にフィットしているとは言い難い。
塩味、油、出汁――好みは分かれる。
だが、
世界観 × 手の届く価格
この2つが揃えば、日本というコンセプトは強い。
日本人が陥りがちな勘違い
日本人はすぐに考える。
「本物の日本食を食べさせたい」
「クオリティを上げれば売れるはず」
しかし、ベトナム市場では必ずしも正解ではない。
・味の再現度
・職人技
・日本基準の完成度
これらよりも先に問われるのは、
“それは、ベトナム人が思い描く日本か?” という点だ。
アニメは難しい。でも、ヒントはそこにある
アニメをそのまま持ち込むのは、著作権の壁が高い。
簡単ではない。
ただし、
アニメが作り出してきた「日本のイメージ」を
どう翻訳するか、どう再構築するか。
そこに、今後のヒントが詰まっている。
日本人が考える「日本らしさ」ではなく、
ベトナム人が好きな日本像を理解すること。
屋台ラーメンの流行は、単なる飲食トレンドではない。
これは、ベトナム市場で“日本をどう売るか”を考える上での、分かりやすい実例だ。
うまくやれば、まだまだ広がる余地はある。
――ただし、日本人の常識を一度、脇に置けるなら、だ。


