ベトナム人の月収の変化に見られる市場の潜在性
近年、成長が著しいベトナム経済。その様は「高度経済成長」とも言われています。国家レベルでの経済成長は個人レベルにどのように反映されているのでしょうか。また、都市部と農村での違いや、南北二大都市にはどのような違いが見られるでしょうか。このほどベトナム統計総局より発表された隔年版「家計生活水準調査」(ジェトロ「ビジネス短信」より)からその実態を見ていきましょう。
右肩上がりの個人所得
2022年のベトナムの1人当たり名目GDPは4,087米ドルで、2012年の2,198米ドルから186%の増加となっています。その間の全国平均所得額の増加は234%であり、経済成長が家計レベルまで反映されていることが分かります。
伸び率を牽引する農村部の所得増加
経済成長以上の所得の増加は内需の拡大と物価上昇を反映したものと思われます。また、伸び率を牽引しているのが農村部の所得上昇であることが見て取れます。ベトナム人はよく「テト(旧正月)を越すと物の値段が上がる」と言います。これらは農村部でもまた同様であり、昔の値段を懐かしむことが会話のネタになることがよくあります。また農村部では多くの若者が海外で働いて家族に仕送りをしており、それが所得増の一因となっているとも言えるでしょう。この統計をグラフにより可視化することでさらに別の側面も見えてきます。
南北二大都市の関連性
一般にハノイ市は政治や文化の中心地、ホーチミン市は商業経済の中心地として知られていますが、この10年での変化は興味深いものとなっています。
10年前の2012年、ハノイ市の一人当たりの月間所得は他の都市部とほぼ同じでした。しかし、2022年にはホーチミン市を抜いて上位に立ちました。都市部は全体的に新型コロナウイルスによる経済の停滞が見られるのに対し、ハノイ市では堅調な所得増が見られているのです。
さらに、農村部の所得は10年前のホーチミン市と同レベルに達していることも見て取れます。ベトナムは亜熱帯の気候に属しており、水不足も少ないことから飢えて死ぬ人はいない国、と言われています。それゆえに勤労意欲が低いのではないかという懸念もあるようです。しかし、データの示すところによればこれらの所得増加は活発な経済活動を促しており、結果としてここ10年の継続した所得増加をもたらしていると言えるでしょう。
「アフターコロナ」を見据えて
現在、ベトナムでは海外からの旅行客数が順調に回復しており、2023年の最初の5か月間で 460万人近くが訪れたと推定され、年内に800万人の海外旅行客を誘致するという目標の 57.5%に達しています。これも所得増に大きく貢献すると思われます。人々の消費意欲は大きく、その指向はSNSやオンラインショッピングの拡大により多岐に及んでいます。NKCでは、ベトナムの消費市場と日本の高品質商品の架け橋となる現地代理店のマッチングや市場調査を実施しております。